だいぶ前、AICがリブート企画としてCAMPFIREで募集していた。
結果としては5,000,000円の目標額に対して841,000円しか集まらず頓挫、わずか16%しか達成できなかったのだが、残念ながら「当然の結果」としか言えない。
ファンの心理を「半分しか」理解できていない
なぜ失敗したのかと言えば、これに尽きると思う。
陣内とディーバの娘が出てくるのは良い。あの二人?は主なコメディリリーフとして優秀だったし悪役側なのに憎めなかったし。くっついてバグロム帝国再興を目指して欲しいと割と本気で思えるカップルだった。
藤沢先生とミーズの娘も良いファンサービスだと思う。まあ、水の神官の後継者であるというのはやり過ぎ感が否めないけど。クァウールはどうしたんだということになるし。
でもまあ、それらはファンの心をくすぐるものだったと思う。
「エンディング後は蛇足をつけず、想像の余地を残して欲しい」
と言いながらもやっぱりファンとしては、
「その後の世界を知りたい」
とも思うわけで。そういったファン心理を半分は満たしてくれそうだと期待できるものだ。
『永遠の世界エルハザード』のエンディング絵を夢想させてくれる
だが、半分しか理解できていなかったと思うのだ。
そしてそれは、制作陣がファンのことを理解できていないということに加えて、神秘の世界エルハザードがあまりにも素晴らしい終わり方をしたという、作品そのものの素晴らしさが邪魔をしてしまうという理由もある。
陣内の娘であるファラーシャが東雲高校の制服を着ているし「生徒会長になる野望がある」という説明からも、『神秘の世界エルハザード』最終話EDで流れていたラフ絵たち、その中でもファンが最も望ましいと夢見ていた現代日本とエルハザードの融合世界を感じさせてくれた。
藤沢先生とミーズが現代的な服装(パーカーとか)で登山していたり、セーラー服のアレーレ、障子のある縁側で日本的な庭園を見ながらお茶してるアフラに掃除してるシェーラ、極め付けにはどこかの公園なのか、明らかに日本でデートしている誠とイフリータ。
朝焼けの東雲高校に少し大人になった誠がイフリータを迎えにくるシーンからの、これら一連のイラストがだいぶ妄想を掻き立ててくれる最高のエンディングだった。
だからこそ、こういった「その後」を制作して欲しいと夢想させてくれた。
もちろん、夢は夢だから良いのであって、本当に制作されたらどう思ったかはわからないけど。
いずれにしてもクラウドファンディングの説明にあったキャラクターで、この2人はとても良いのだ。ファンの、特にOVA版が好きな人たちにとっては不安がありつつも当時の夢を叶えてくれる期待にも繋がったかもしれない。
「n期」を是が非でも阻止したいと警戒させられるキャラ
この辺まではいいんだけど、最大の問題は主人公。
主人公は「ナオト」。
制服は東雲高校のだし誠の面影もある。説明文からも多分だけど誠と関係している、その他のキャラ説明からいっても誠の息子か。
そうは思うんだけど、当然ながらそう書かれてはいない。
そりゃそうだ、わかる。
最大のキーなんだから、そう簡単に制作前にネタバラシするわけがない。
けれど、だからこそ不安も掻き立てられるのだ。
「これ、誠やイフリータ、菜々美たちと無関係な話の可能性もあるんじゃね」と。
そうなったらアウト。
そもそも、壮大な時間軸と複雑な人間関係で「時間」を完全に無駄なものにしている『天地無用!』シリーズとは違うのだ。
天地無用の方は天地たちの子供がメインになっても不自然ではない。もはや誰が誰の子供なのか親なのかわからないくらいに入り組んでいるし、天地以外がメインとなるシリーズもある。
だがエルハザードは違う。
特にOVA版のファンにとってはエルハザードとはあくまでも「誠とイフリータの話」なのだ。
異次元の世界や、特に神秘の世界2が不評なのもそこに理由がある。
クァウールならまだしも、イフリータの偽物(あえてこう言っておく)に興味はない。
イフリータを迎えに行く誠と、誠の迎えを信じて時空を超えたイフリータ、この2人あってこそのエルハザードなのである。
その点でいきなり「ナオト」なんてキャラを出されれば期待より警戒の方が強く出てしまう。
エルハザードに期待するもの
OVAだけあって、当時からしても今見ても作画は充分に良いものだと思う。
だからリメイクは期待していない。
では何を期待しているかと言われれば、人によるかも知れないけれど自分なら「エンディング前後、誠が迎えに行く前とイフリータがエルハザードに戻った後どうなったかを描いて欲しい」。
もちろん、それが期待ハズレになる可能性もある。
でもここを描くためのパイロット素材作るから募金してくれ、と言われたらする。
エンディング絵にあったシーンが実現されるのであれば、もう一も二もなく募金するだろう。
どうなったらアレーレがセーラー服着て通学することになるのかはまるで想像できないが、だからこそそういった点をどう料理してくれるのかという期待が大きいのだ。
けれど、それが明確にならない限りは期待できないし、募金はできない。
変にファンの不安を煽るくらいなら何も作らないで欲しい。
それこそクラウドではないけれど、「思い出の中でじっとしていてくれ」なのである。